雨のち晴れ
私はマスターに促されるがままにお店に入った。
さらに私を包み込むコーヒーの香りと、木の香り。
建物がログハウス風だからだろうか。
お店の中は、小さかったけれど、とてもお洒落で見たこともない置き物や絵があり、観葉植物がいくつか。
カウンター席が6つほど、テーブル席が3つあった。
「好きなところ、どうぞ。」
私は1番奥の窓際のテーブル席へと座った。
私が座ると同時に、店内に1人だけいたお客さんが立ち上がって「マスター、ごちそうさん」と言った。
「今日のブレンドは何か違ったね。」
「うん、豆を少し変えましてね。」
「相変わらず美味しいよ、これで明日も頑張れそうだ。」
「それはよかった、また来週。」
常連さんなんだろう。
会計を終え、マスターに手を軽く上げお店を出て行った。
そして、マスターはお冷を私に出し、「コーヒーは飲めるかい?」と聞いた。
「ミルクあれば…飲めます。」
「そう、良かった。僕はミルクにもこだわっていてね。少し待っていて。」
マスターは豆を焙煎し始め、カウンター内の奥のキッチンで調理を始めた。
私は、外へ視線を向けた。
何やってるんだろう、私。
こんなところで、こんな知らないお店で、こんな知らない店員さんと。
あとでお金でも請求されても困る、ましてや変質者のような人だったらどうしようか。
色々とグルグル考えた。