雨のち晴れ
「清々するし、丁度いいわ。」
自分に言い聞かせるように言った。
「ねぇ、紗子先輩?」
「何?」
「先輩、森岡さんと話しているとき、すごく表情が柔らかいこと、知ってました?」
「え?」
私は、ぴたりと手を止める。
「絵里、あんな先輩見たことないから、最初はびっくりしました。でも、先輩は本当に森岡さんと出会って変わりました。柔らかくなって、森岡さんがいないときでも全然雰囲気変わって…」
「……。」
私が―――?
私が正樹と出会って変わったの?
「だから絵里、思ったんです。先輩にとってきっと森岡さんはかけがえのない人なんだろうなって。先輩も気付いてるんじゃないですか?先輩にとって森岡さんは…」
「やめてっ…!!」
ハッと気づいたときにはもう手遅れ。
私は持っていたサンドウィッチを絵里の方に向かって投げ、叫んだ。
「ご、ごめ…」
私が呟くも、重たい時間が流れたような気がした。
私、本当に最低だ…
今にも逃げ出したい気持ちをぐっとこらえる。
こんなの私じゃない―――
「これ、廃棄にしちゃいますいか。店長に怒られちゃいますかね~?」
私はハッと顔を上げると、そこには微笑む絵里がいた。