雨のち晴れ
「家族のせいにしたくはないけど、でもそんな現実から逃げたくて、中学生に入った瞬間から荒れました。柄の悪い…ヤンキーかな、そういう人たちとツルむようになって。
お酒、たばこなんて当たり前。バイクに深夜徘徊みたいな?
何度も親は学校には呼び出されたけど、結局絵里のこと腫れ物みたいに扱うだけで、どんどん荒れていきました。
中学3年生くらいからは、男関係にもだらしなくなって…
高校も地元でまぁまぁ荒れているとこに行って、そのころは本当にピークでした。男の子たち、とっかえひっかえです。もちろん家なんて帰っていませんでした。」
私は言葉を失い、ただ茫然となった。
まさか絵里にこんな壮絶な過去があっただなんて。
「でも、そんなときに絵里のことを救い出してくれたのが今の彼氏さんです。絵里より4つ上なんですけど。
絵里が朝方にフラフラしていたのを、当時大学生で新聞配達のバイトをしていた彼が見つけてくれました。
もうめっちゃその場で怒られて。強引に彼のアパートにぶち込まれました。でもその時は絵里、この人もヤリたいだけかって…でもひたすらお説教でした。」
絵里はクスクスと可笑しそうに笑った。
「もちろん、最初は反発しました。だってそんな見ず知らずの人の言うことなんか聞けないじゃないですか。でも、彼はそんな絵里を諦めなかった。
逃げ出しても、朝方フラフラすると見つかってしまって。挙げ句の果てには、彼のバイト先に送られたんです、俺がバイト終わるまでこいつを見張ってといて下さいって。」
「……。」
「そこのバイト先の大人達は、今まで出会ってきた大人とは違いました。のんびり、のほほんとしていて、なんだか異空間のように思えた。
ずっと絵里は腫れ物のように扱われてきたけれど、そこの人たちはむしろ大人と対等っていう感じで。」
絵里は何かを懐かしむかのように、遠くを見つめて優しく微笑みながら話した。