雨のち晴れ



「今となれば、彼と恋人にもなって、心を開いたのは惚れてたからでしょ?って言われそうですけど。

でも何か違うんですよね、言葉では表せないなんていうのかな。」

「そう、だったんだ…」

「絵里、彼に教えられてやっと分かったんです。人のせいになんてしちゃダメだって。自分の人生なんだから、自分でちゃんと切り開かなきゃって。

絵里はずっと、自分なんて、どうせ自分なんてって、悲観して生きてきました。だから、変わらなきゃって。自分の人生、一度きりなんだから、後悔ないように精一杯やらなきゃって。そう思うようになりました。」


また強風でドアが一度開いた。

雨も強くなっているようだ。


「だから、それからは一切、人間関係断ち切って猛勉強しました。そして、こんなにレベルのある大学に入れた。これも全部彼のおかげです。彼がいたから、今の絵里がいるんです。」


絵里はにこやかに笑った。


「もちろん過去は消えないけれど、未来はいくらだって切り開けるんです。

人を信じる素晴らしさ、そんなことも彼は教えてくれました。」


人を信じる素晴らしさ、か。


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