雨のち晴れ
「何?」
あんまりにも大きな声だから少し驚いて顔を出す。
「これ…紗子が?」
テーブルの上にあるシフォンケーキ。
「あ、うん。まぁ、一応手土産?」
「そうかぁ、ありがとうな。せっかくの紗子の誕生日なのに。
こう見えても俺、本当はちゃんとお祝いしたかったんだ。」
「あ、いや、こっちこそ…プレゼント、ありがとう。」
正樹はにっこり笑った。
「今度、改めてお祝いしような。」
私は少し照れ臭くなって、視線を落として再びキッチンへ戻った。
そして盛ったものを、テーブルへと運ぶ。
「すげぇ、ほんと美味そう。」
「冷蔵庫のもの、ほとんど使っちゃった。」
「全然問題ねぇよ。お腹に良さそうなもんばっかだな。ありがとな、紗子。」
久々に、また正樹と向かい合ってご飯を食べた。
「うわ、うめぇ〜。ほっこりする味だな。」
「ほんと?」
「ほんと。優しい味。やっぱり作る本人が優しい人だとこうなるんだろうな。」
———私は優しくないけどね。
そのコメントはサラッと流しながらも、そっと今目の前にいる、少し髪がボサボサの正樹を見る。
「なんか、正樹でも…人間なんだね。」
「ん?」
「いつも正樹って、完璧な感じしてた。でも、正樹でも風邪とか引くんだなぁ…って。」
「ふっ、当たり前だろ?けど俺、紗子の前では無敵でいたいけどな。
こんな風に弱っちいと、紗子のこと守れねぇもん。」
「守ってくれなくていいわよ。」
「またそういうこと言う。」
クスクスと笑う正樹。