雨のち晴れ
真実(1)
**真実(1)**
「というわけで、この時の人の心理は…」
先生の声が呪文のように聞こえるある日の午後。
心理学の講義は一般的には人気。
でも私が心理学の講義を受けているだなんて、笑ってしまう。この私が。
ただこの時間にいい授業があまりにも無かったからだ。
妥協に妥協を重ねて取ってみたが、やっぱりくだらないと感じてしまう。
窓からは涼しい風が流れ込んでくる。
気付けばあっという間に10月。
秋はやっぱり過ごしやすい。
そう言えばマスターと出会ったのも秋だった。
「はぁー」
あの日から———正樹に告白をされてから、ずっと私の気分は晴れなかった。
どんよりしている私の気持ちなんて知るはずもなく、相変わらずの正樹に少しだけ苛立ちを覚える。
ピロン〜♩
スマホが鳴る。
あ、やば、スマホの音切ってなかった。
私は一応周りの人たちに軽く頭を下げて、確認する。
【from 正樹
紗子、今度バイトお休みのときに、
一緒に紅葉を見に行こう。
紗子の休みに合わせるよ。】
紅葉…ねぇ。
最近は少しだが、メールのやり取りをするようになった。
私からはしないけど、こうやって時々届く。
返信は、あまりしない。
けれどなんとなく今日はする気になった。
【to 正樹
来週の土曜日なら。】