雨のち晴れ


よく考えてみれば、私と正樹は不思議な関係だ。

私自身、正樹のことだって、イマイチよく分かってない。
正樹が私のことをどこまで知っているのか分からないけど、そもそも彼は誰だろうか。


お互いがお互いのこと、知らないと思っていたけど、実はそうではないのかもしれない。

それは最近の私の思い過ごしであって…

だって、正樹は私の名前をいきなり呼んで登場したんだから。

「では、本日の講義を終了します。」

いつの間にか、講義が終わっていた。

あ、やば。ほとんど聞いてなかった。
でもまぁ、ぼーっとしながらも、なんとかノートは取れていたみたい。

ふぅ…

いつも通り、このあとはバイト。

今日もきっと正樹は9時過ぎに来るのだろう。

わざわざ家を通り越して。


「……。」

大学を出て、コンビニに向かいながら考える。


正樹はどうして、私のことを好きなんだろう。

私の何がそんなに良いのだろう。

守るって、何なのかな…


正樹のこと、嫌いではない。

正体は不明ながらも、きっと信じても良い人だとは思ってる。

一緒にいることが嫌ではないし、心地よいと感じる。

でも、それは正樹が言う〝好き〟ではないと思う。

どちらかというと…
そう、マスターに近いような、そんな気持ち。

だから、あんなことを言われても、どうしていいか分からない。


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