雨のち晴れ


正樹が考える〝好き〟って何かな。

私の考える〝好き〟って何かな。

…分からない。

そもそも私は人を好きだと感じたことがないから。

こうやってたくさん考えても、いつも答えが出ない。
毎日毎日その繰り返し。

答えが出ない問題が、この世の中にあるだなんて。
ましてや、自分に降りかかってくるだなんて思ってもみなかった。

無駄な時間、そう今までの私ならそう考えていた。
きっと、淡々と。馬鹿らしいと。

そう考えようとは思っても、またいつの間にか考え出してしまう。

こんな自分がとても嫌だった。

そして、最終的に、心の中でマスターに助けを求めていた。

会いたいよ、マスター。

マスターの優しい笑顔、マスターの淹れるコーヒー、お店の雰囲気。

今でも新鮮に覚えている。

あの頃の私を唯一受け入れてくれた人。


じゃあ今は…?

パッと頭に浮かぶのは絵里と、正樹。

「正樹…」

ブンブンと何かを振り払うかのように頭を振る。
最近の私は、本当にどうかしている。


< 87 / 173 >

この作品をシェア

pagetop