雨のち晴れ
正樹が考える〝好き〟って何かな。
私の考える〝好き〟って何かな。
…分からない。
そもそも私は人を好きだと感じたことがないから。
こうやってたくさん考えても、いつも答えが出ない。
毎日毎日その繰り返し。
答えが出ない問題が、この世の中にあるだなんて。
ましてや、自分に降りかかってくるだなんて思ってもみなかった。
無駄な時間、そう今までの私ならそう考えていた。
きっと、淡々と。馬鹿らしいと。
そう考えようとは思っても、またいつの間にか考え出してしまう。
こんな自分がとても嫌だった。
そして、最終的に、心の中でマスターに助けを求めていた。
会いたいよ、マスター。
マスターの優しい笑顔、マスターの淹れるコーヒー、お店の雰囲気。
今でも新鮮に覚えている。
あの頃の私を唯一受け入れてくれた人。
じゃあ今は…?
パッと頭に浮かぶのは絵里と、正樹。
「正樹…」
ブンブンと何かを振り払うかのように頭を振る。
最近の私は、本当にどうかしている。