雨のち晴れ
「雨、止んだみたいだね。」
外を見ると、重たい雲の間から少しの光が差し込んでいた。
「明日は晴れるといいね。」
「そうですね…」
私はその後、「ごちそうさまでした。」と深々と頭を下げた。
「今度、ちゃんとお代持ってきます。」
「ん?いやいや、これは僕からの好意だから受け取って。」
マスターの柔らかい言葉遣い、雰囲気。何もかもが今までの大人とは違う。
私は俯いて「また、来てもいいですか…?」と小さな声で、力を振り絞って聞いた。
「もちろんだよ。いつでもおいで。」
マスターは嬉しそうに笑って言った。
私は、もう一度頭を深く下げて、お店を後にした。
「…っ」
私は走った。今ならどこまででも走れそうな気がした。
こんなに心が軽いのはなぜ?
こんなに明るい気分になれたのはなぜ?
あの涙は、きっと今まで私がため込んできたものの全てだ。
やっぱり、私はまだまだ子どもなんだ。
自分の行動と心は全くと言っていいほど追いついていなかった。
もう、心が悲鳴を上げていたんだね。
大人ぶって、淡々と過ごしてきた私、でもどこかで本当は誰かにすがりたかった。
裏切られるのは怖いけれど、でも本当はもっと人を信じたかった。
誰かの温もり、優しさ、愛情、心、すべてを感じたかった。
それをマスターは、私に一瞬で教えてくれた。
私、もう一度、誰かを信じたい。