雨のち晴れ


どこか自分の中で、マスターと再び会えることを希望にして生きてきたのかもしれない。

私にとって、マスターは唯一救ってくれた人。

私に光を与えてくれた人。

そのマスターが、もういない…?


正樹の声をかき消すかのように泣く。

やめてよ、正樹。
あなたにそんな悪い冗談は似合わない。


ひとしきり泣いて、私はよろよろと立ち上がる。

真っ暗な部屋、でも今は部屋の電気なんていらなかった。

暗いままでちょうどいい。

私は、ぼんやりとした視界でバスタオルだけ取り出してくるまり、ベッドへ入った。

もう何も考えたくない。

何もかも。全て。


あれだけ泣いたのに、再び涙が出てきた。

「…っもう嫌だ」


初めて、弱音を吐いたような気がした。

ずっと何の感情も持たずに生きてきて、私の人生で一番のどん底に落とされた今———

自然と口からそんな言葉が漏れた。


私こんなにも弱いんだ。全然強くなんかないじゃない。
自分が惨めで、みっともない。

結局ひとりじゃ…ひとりじゃ何も出来ないの?

私はそんな無力な人間?


現実を受け入れられずに、そんなことばかりを考える。

考えたくないのに、頭の中はごちゃごちゃした感情でいっぱいだった。


そして、強く目を閉じ、朝が来るのをひたすらに待った。



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