雨のち晴れ


これは、まるで暗示のよう。
今はまだそれしか言えないって、いずれは分かるってこと?

でも、また会えるみたいな、含みを持たせた言い方…。
マスター、ずるいよ。


マスターは、ずっと病気を抱えてきたの?

毎日、どんな心境だったの?

私にはそんな姿1度も見せなかったね。

やっぱり…
こんな事実、私には受け入れられない。


もう、何もする気になれなかった。

何も————


ベッドの中に再び入る。

聞こえるのは、外からのザーッと雨の音。

「いつだって、雨。」

そう静かな部屋の中で呟く。

私の心はいつだって雨が降っている。

晴れることは、ほんの一部。


ふと、頭の中に正樹が浮かぶ。

私に光を与えてくれたもうひとりの人。

でも今はもう…
信じることが怖かった。

伯父って何よ…もう何なのよ。


どうしてもっと早く言ってくれなかったの?
どうして私に必要以上に関わるの?

何が嘘で本当か、もう訳が分からなかった。

何もかも、消えてしまいたいような気分。


しばらくして、着信が鳴る。

一度切れて、また再び鳴る。

それでも無視して、切れて、また鳴る。

「しつこい…」

正樹に決まっている。

私のスマホが鳴るのは、ほとんど正樹だけ。


私の気持ちとは裏腹に、軽快なメロディーが耳障りだった。

「…もうっ、うるさいって!」

鳴り止まない音にイライラして、私は壁に向かって枕を投げつけた。


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