仲良し8人組
衝動的殺人。
そう思ってしまいそうだが、殺された3人は全員が瀬野と顔見知りだ。
かといって、計画性も無い。
こうやって直ぐに警察に場所を特定されているのが何よりの証拠だ。
瀬野はこの殺人を隠そうとなんてしていなかったのだ。
瀬野を表に停められていたパトカーに押し込むと、チッと舌打ちをした日下部が眉間に皺を寄せたままポツリと言葉を漏らす。
「気持ち悪い事件だ」
それと同時にぶわっと生ぬるい風が通り過ぎていった。
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「日下部さん、お疲れ様です!」
先程逮捕された瀬野の不気味な行動に頭を捻っている日下部が、刑事課へと足を踏み入れた瞬間、能天気な明るい声音が響く。
3年前に、日下部の下についていた田村だ。
ひょろっとした体格と、さっぱりとした顔立ちは日下部とは正反対。
田村がデスクで書類を作成している所に日下部が戻って来たらしい。
クルッと椅子を回して日下部の方を向く田村の顔はニカッと笑っていて。
日下部が犯人逮捕にいたったのを知っての事だろう。
「ああ、本当に疲れたよ」
そう溜め息混じりに言葉を放つと、田村の隣のデスクの椅子を引いてドカッと腰を下ろした。
田村の隣のデスクは、日下部のデスクとなっているのだ。
「朝早くからの呼び出しですもんね。最近は殺人事件なんてパッタリ無くなってたのに」
確かに…という顔をして田村が言うが、それよりも日下部を疲れさせたのは別の事だ。