仲良し8人組
「あ、…あっ、……今、……サトシが……。オ、オレの、……目の前で、……溶けて……消えたんだ」
「溶けて…消えた?何を言っているんだい君は?」
涙をボロボロと流しながら自分の目の前を震える手で指差す男が、一体何を言っているのか理解出来ない。
消えたとは、犯人が逃げた…という事か?
「犯人が逃げた…という事ですか!?」
若干語尾を荒げてしまったのは、犯人を逃がしてしまったという焦りからだ。
が、日下部のその質問に男は大きく首を横に振る。
「ち、……違う!ほ、本当に、…溶けて消えたんだ!」
「人は溶けませんよ」
「ほ、本当なんだ!……オレは見たんだ!……オレが、……アイツを……」
拉致が飽かないと考えた日下部から小さな溜め息が漏れる。
その時、慌てた田村がこの部屋に入って来て声をあげた。
「日下部さん!全ての部屋を確認して来ましたが、誰も居ませんでした!それに、通報にあった遺体すらもありません!大きな血痕も何処にも見付かりません!」
一瞬目を見開いたまま固まってしまう。
日下部は、冷静なタイプだと言われる事が多かった為に、こんな事は珍しい。
それ程、驚いたという事だ。
が、直ぐに目を鋭くさせると、泣いている男へと向ける。
「どういう事でしょうか?」
「な、……何で!?」
男は日下部以上に驚いた様子で、ガクガクと身体を小刻みに震わせ始めた。
「オ、…オレは、……嘘なんて吐いてない!」
そう叫んで立ち上がろうとした男の肩をガシッと掴む。