仲良し8人組
二人が歩くスピードは速く、その間にもその通報の事を詳しく日下部が田村から聞き出していく。
「通報してきたのは家族か?」
「いや、それが名前を名乗らなかったって言うんですよ」
「怪しいな……」
「そうですか?」
「名前を名乗らない奴は、もう現場に居ない事が結構ある」
「通報した奴が犯人って可能性ですね」
「ああ」
警察へ通報をしてきて、名前も言わずにそのまま逃走してしまうというケースは今までにも何件かある。
ただ、平和そのものの今に人を刺し殺して犯人が逃走なんて話は、全く聞かなかったのだが。
ついさっき殺人事件が起きた所なのに……。
平和を覆す様に、たった1日で2件も事件が起こった事に憤りを感じた日下部がグッと唇を噛んだ。
その時、日下部と田村の横をズボンのポケットに手を突っ込んで歩いている少年が通り過ぎた。
その少年が日下部の目に留まる。
さらさらの綺麗な黒髪の少年は、あどけない表情から分かるように小学生の高学年程だろうか。
日下部はその少年に近付いていくと、
「やあ、君」
おもむろに彼へと声を掛けた。
当然、突然の事に目を見開いて驚いている少年。
「えっ!…僕っすか?」
周りをキョロキョロと見渡しながらも、自分以外には誰も居ない事にそう口にするが、明らかに表情が固い。
そこに、悪いね。とへらっと笑って田村がやって来る。
日下部の顔はどこか厳格な雰囲気が漂っている為に子供受けが悪い。
それを田村も知っているのだ。