仲良し8人組
女性の肩から手を離し、ポケットからスマホを取り出すとそれを耳に当てる。
と、同時に頭に響く大きな声が聞こえてきた。
『日下部さん!馬渕家に上がって確認したんですが、ここには誰一人いません。刺されている人もいなければ、その血痕すらありません』
馬渕家に着いた田村からの報告。
それを聞いた日下部がグッと眉間に皺を寄せる。
「そっちもか……」
『そっちも?』
ポツリと漏らした呟きに対して、不思議そうな田村の声が日下部の耳に響く。
「あの時と同じだよ」
『あの時って、3年前の』
「ああ。今、俺の目の前で3年前の伏見隆と同じ事を言う女がいるよ」
3年前にあった誤報の時と全く同じ状況。
あんなに奇妙な事が2度あった事が、日下部の気持ちをモヤモヤとさせる。
『ど、どうされるんですか?』
「一応、誤報したのもあるし、署に連れていく。その後は……」
『伏見と同じ精神病棟へ…ですね』
「ああ」
そこで電話を切った日下部が再び目の前の女性へと目を向ける。
「私の……せいで……」
そう呟き続けている彼女に、
「少し署までご同行願います」
とだけ言うと、彼女の腕を掴んで上へと引っ張った。