仲良し8人組
足下の恐怖
ひなの誤報という事に終わったあの事件から3年後の5月16日。
ビルの建ち並ぶ町の歩道は、平日の昼過ぎという時間に関わらず人が多い。
そこを楽しそうに横に並んで歩く二人。
ひなと亮介だ。
「誕生日の翌日が休み取れて良かったね!」
亮介へと笑顔を向けるひなに亮介も優しく笑いかける。
「ひなも休み取ってくれてサンキューな」
「そりゃあ取るよ!大事な彼氏の誕生日祝いなんだから」
「俺も大事な彼女の誕生日の日は必ず休み取ってやるよ」
「期待しとく」
端から見たとしても幸せそうに感じるだろう二人の会話。
そんな会話の最中に突然ひなが足を止めた。
「うっ……、いっ……」
そう声を漏らしながら両手で頭を抱えるひな。
その顔は苦痛に満ちている。
「どうした!?大丈夫か!?」
慌てた亮介が心配そうにひなの顔を覗くが、ひなは頭を抱えたまま、へらっと笑ってみせる。
亮介に心配を掛けない為にだ。
「ご、ごめん。ちょっと頭、痛くて」
「どこかで休むか?」
「ううん、大丈夫。直ぐに治まるの。この間から何度かあるから」
「ほんとか?」
「うん。大丈夫」
ひなの事になると極端に心配症になる亮介には、ひなの強がりなんてバレているのだろう。
それでもひなに大丈夫だと言い切られてしまえば、亮介からはそれ以上何も言ってこない。
歩道の端によって立ったまま頭を抱えるひなを支える様に立つ亮介。
その目は心配そうなままだ。