仲良し8人組
緊急の仕事が入ったら、休みでも行かなきゃならないとは聞いていたが、今までひなと一緒にいる時に緊急の仕事が入った事はない。
かなりの緊急性を要するのだろう。
それをひなも分かったから 、わざと悪戯顔で言葉を返す。
「もう、仕方ないなぁ。仕事終わるの待ってるよ!」
「おう!俺の家で待っとけ!」
「うん」
ニカッと嬉しそうに笑う亮介につられて、ひなも頬が緩む。
亮介のこういう所、好きだなぁ。
そう思った瞬間、ふとさっき亮介が電話をしていた時に聞こえてきた相手の声がひなの頭を過る。
低い男の人の声。
多分上司なのだろう。
しかし、ひなにとっては声音よりも気になるのが亮介の呼ばれ方だ。
「そういえばさ、亮介って『エース』って呼ばれてるの?」
「えっ、ああ。聞こえてた?」
「うん。会社のエースっていう意味?」
「ちげぇよ。何でかそういう風なアダ名なだけ」
「ふーん。アダ名か」
会社での業績が良くて、エースと呼ばれているのかと思ったのだか違ったらしい。
ただのアダ名。
変なアダ名。
そう思ってしまったことは決して口にしない。
亮介は会社の理念に心酔しているから。
二人で少し足早に歩く。
駅の近くにドーンとそびえ立つ大きなビル。そのビルにデカデカとついているテレビ画面。