仲良し8人組
エピローグ
白とピンクに纏められた部屋。
ひなの部屋だ。
ひなはその部屋をクルッと見渡すと、ふふっと笑い声を漏らす。
そろそろこの部屋ともお別れか……。
そう思って感慨深くなった自分が可笑しかったのだ。
床に置かれているクッションに座り、ローテーブルに向かっているひな。
ひなの手には赤いペンが握られている。
そして、ローテーブルの上には結婚式の招待状がある。
ひなと亮介の結婚式の招待状だ。
亮介の分は既に終わっており、ローテーブルの隅に重ねて置かれている。
その一番上にある招待状の宛名には亮介のお兄さんの様な存在だという『瀬野貴文』という名前が丁寧に書かれていた。
ひなはまだ書き終わっておらず、招待状に一言ずつコメントを書いている。
そして、丁度今そのコメントの横にハートマークを書こうと赤いペンを持ったのだ。
赤いペンが真っ白な紙の上に色をのせる。
ジワジワと染みる様に色付いていく赤。
その時、ひなの頭がズキンッと痛んだ。
と、同時に、
「ネェ、……アナタは…どっち?」
そう言う女の声がひなの頭に響く。
最近、頭痛と共に聞こえてきていた声。
だが、今日は自棄にハッキリと聞こえる。
不意に後ろに誰かがいる気配がして、バッと勢いよくひなが振り返った。
だが後ろには誰も居らず、壁が見えるだけ。
「だ、…だよね。誰も居ないって」
誰かが居るわけがない!と自分に言い聞かせるようにへらっと笑ってそう口にする。