仲良し8人組
「今からだとまだ電車ないし、食べ物とか買ってから行かない?」
二人並んで歩き始めると、ひなが亮介へそう言いながら首を傾げた。
今いる所から地元の中学校までは電車で一時間位掛かる。だが、地元は田舎というものになるのか電車の本数が極端に少ないのだ。
チラッと左腕の腕時計へと目をやり、
「あっ、そうだな」
と亮介が微笑む。
それにつられる様にひなもほんのり頬を染めてふわっと笑った。
「この近くスーパーあったよな?」
「うん。そこの角を曲がって直ぐにあるよ。そこで買おっ!」
真っ直ぐ進む道の左側の角を指差すひな。
その瞬間、再びひなの頭の上に亮介の手が置かれ、わしゃわしゃっと髪を乱す。
「おう!」
その言葉と共に。
髪が乱れた事にひなが不満そうに唇を尖らせるが、亮介にもう何を言っても無駄なだけだという事も分かっているわけで。
だから、
「亮介に何奢って貰おうかな」
ひなの仕返しはこんなもの。
「えっ!俺が奢んの!?」
「フフッ。冗談だってば。何、本気にしてるんですか。バーカ」
「冗談かよ」
でも、本気で奢らす気も無いから笑って終わる。ただそれだけの馬鹿な会話。
の筈だったのだが。
「まあ、でも。ひなにだけだったら仕方がないから奢ってやるよ」
「えっ!」
思ってもいなかった亮介の返答に、驚きからひなの目が丸くなる。
が、それも一瞬の事。
「チコルチョコ1個な!」
「うわー。ケチだぁー!」
「うっせぇ」
「働いてる癖にー」
「年齢は同じだろ」
やっぱり他愛もない会話で笑い合うだけ。