仲良し8人組
記憶の足枷
1
ペタッ。
ペタッ。
真後ろから聞こえてくる嫌な足音。
その音に背筋が震え上がるのが分かる。
そっと自分の両手を見てみれば、真っ赤に染まった掌。
これは、……誰の手?
「イ、…イヤアァァァァァァア!!」
叫び声と共に、ベッドから上半身を起こしたひなの表情は真っ青で、ガタガタと小刻みに身体を震わせる。
そしてキョロキョロと周りを見渡すと、一度ふうっと息を吐き出した。
ひなの額から流れた冷や汗のせいでか、顔に髪がへばりついている。
その髪を右手でそっと払う。
ひなの怯えた様な目に映るのはひなのよく知っている光景。
窓から射す明るい朝の日差しが部屋を照らす。
ここは、間違いなくひなの部屋だ。
夢……。
そっとひなは自分の両手の掌を見下ろすも、そこにあるのは何の変てつも無いいつものひなの手。
真っ赤な色なんて欠片もない。
凄く、嫌な夢……だった。
……でも、……どんな夢だったか全く覚えて無い。
そんな思いがひなの頭を駆け巡る。それと共に、ブルッと身体を震わせた。
兎に角ベッドから出ようと立ち上がろうとした瞬間、ズキッと頭に鋭い痛みが走る。
「いったぁ……」
痛みが走った頭をゆるゆると手で撫でるも、ズキズキとした痛みは消えてくれない。
もしかして、この頭の痛みが怖い夢の原因なのかも。
そう思うと、さっきまでの何に怯えているのか分からないが、震える様な恐怖はたいした事ではなかったのだと思えてくる。
部屋の時計を確認すると、今は朝の6時50分だ。
いつもより遅めの起床時間。
でもそれも今日は仕方無いと思えてしまう。