仲良し8人組
あっ!……あのノート。
確か、仲良し8人組の住所とそれぞれの携帯番号を書いておいたノートだ。
携帯を無くした時にと思って書いておいたんだ!
化粧を終えると直ぐに、その本棚へと駆け寄るひな。
目的は当然ピンクのノートだ。
亮介には拒絶されてしまったが、他の皆なら大丈夫かもしれない!
ピンクのノートを手に取ると、ページを捲る。
そこには、ひなの記憶通りに仲良し8人組の住所と携帯番号が書かれている。
何故かひな自身のものまで書かれているのは、それすらも覚える自信が無かった表れなのだろう。
先ずは梓から。
専門学校の梓なら、まだ学校に行っていない時間だ。電話に出てくれる時間はある。
それに、梓なら何故亮介が怒っているかの理由も知っている可能性が高い。
当然、ひなが何をしたかも。
梓の番号をノートを確認しながらタップしていく。
ドクドクとひなの頭に響く心臓の音。
自分が何をしたのかが分からないという事にこんなにも不安になるという事に初めて気付いた。
初めて知った。
そう思うひなの耳にスマホから届いた音はコール音なんかじゃない嫌な音。
『この電話は現在電波の届かない所にあるか、電源が入っていない為、繋がりません』
機械的な案内の台詞が流れるだけ。
梓には繋がらない。
「あ、…梓ったら、充電切れちゃったのに気付いて無いのかな?……あるある。そういう事あるしね」
ひなの無駄に明るい独り言がテレビの音に混じる。