仲良し8人組
声は明るくて気にしていない風なのに、ひなの頬は若干ひきつっていて口は歪んでいる。
頼みの綱である梓に繋がらなかったせいだ。
梓は携帯を肌身離さず持っているタイプだったから、今まで梓に電話が繋がらなかった事なんて一回も無かった。
ひなが梓の授業中等には電話は掛けずにラインで済ましていたからというのもあるのだが。
タイミングが悪くて電波の悪い所にいたっていう可能性もあるしね。
ふうっと息を吐いてそう気持ちを切り替えると、次のノートに書かれている電話番号をタップしていく。
次の相手は夢だ。
夢なら冷静に周りの事を見ている事が多いから、ひなの事も見ていただろうという考えから。
今度こそ!と意気込んでひながスマホを耳に当てる。
が、無情にも聞こえてきたのは梓へ掛けた時と同じ音声案内。
夢……も?
「あー、あるよね。昨日はきっと皆疲れちゃったんだよ。きっと…」
わざとらしい位明るい声音の独り言。
もしかして、昨日自分がした何かに怒って、皆が着信拒否している……。
そんな嫌な考えが頭の中を駆け巡るが、ぶんぶんと頭を横に振るとその考えを頭から消し去るひな。
そうしないと不安でいてもたってもいられないのだ。
「今は皆忙しい時間だし、…また後でにしよ」
そう自分へ言い聞かせると、手に持っていたピンクのノートとスマホを鞄の中へと入れてテレビを消す。
後でもう一度掛けたら大丈夫。
だって、私達は仲良し8人組なんだから。
そんな思いと共に短大へと向かう為に家を出た。