夢想い~キミオモイ~

~入学式~


信璃と出合って5日・・・

4月6日の今日は高校の入学式。

本当は高校になんて行きたくなかった。

この家を出て、一人で生きていきかった。

けれど15歳の私にはそんな生活力なんてなかった。

結局、親の意見で高校に進学。



なんて無力なんだろう・・・



そう何度思ったことか。




「お母さん、朝食作ってあるから勝手に食べてね」

寝室で寝ている母親に一言声をかける。

返事なんか返ってこない。

もうどうでもよかった。


真新しい制服に身を包み、玄関に立つ。

玄関にある鏡に映った姿が少し恥ずかしかった。


「いってきます」


誰もいない玄関で呟く。


虚しくなるだけなのだからやめればいい。


そう心に思っていた。


けれど、どこかで「いってらっしゃい」と言ってくれるのではないかという願いがあった。


そんな“夢”持たないって決めたのに。


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