アドラメレク
辺りが霧に覆われている
川岸・・・

周囲は高い崖に囲まれており、崖の間を裂く様に流れている清流

ひとりの女の子が、砂利道をトボトボと泣きながら歩いてくる

泣いている子供に声をかけようとするが、なぜか言葉が出てこない

向こうも私には気付いていない様子だ

こんなに近くにいるのに

しゃくりあげながら泣き続けている

(どうしよう・・・)

ふと、霧の向こうからたいまつの明かりが見えた

ひとつ、ふたつ・・・

女の子が顔を上げた

泣き顔が、恐怖を浮かべた表情に変わっている


― 私はその女の子の顔に見覚えのある事に気付いた
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