あまさがたりないくらいでいいの。
「━━め、ねぇ!あめってば!」
「わぁ!?…あ、雫石」
「さっきからずうっと呼んでたのにー」
「ごめんごめん!で、どしたの?」
「あ、そうそう!聞いてよー!
…あれ?何話そうとしたんだっけ?」
いつもこんな感じの雫石は、まぁいっか!と言って笑顔を作った。
“彼”のこと、雫石には言っている。
だけど特にそういう事に干渉してくるわけじゃない。
もちろん私も、雫石の好きな人とか知りたいからいつも聞いているけど
「好きな人?いないよー!
あたしにはあめで充分だもんっ」
と決まって返される。
そんな風に言ってもらえるのはとても嬉しいけど、雫石は可愛いから勿体無いな、なんて思う。
「━━HR始めるぞ」
担任の先生が勢いよくドアを開けて入ってきた。
今日も、私の1日が始まる。