あまさがたりないくらいでいいの。
はれのひ。
受験生、と言われるのにはもう慣れた。
最上級生、と言われるのにも慣れた。
学校が始まってから2週間がたとうとしている、今日。
中体連までまだあるから、全然勉強に身が入らない。
「━━を決めるぞ」
先生の声が、明後日の方向にある私の意識を呼び戻した。
あれ、今何を決めるって言った?
まぁいいか…後で雫石に聞こう。
HRが終わると1時限目は体育だったから、皆バタバタと着替え始めた。
更衣室に向かう途中、雫石がうーん…と唸っていた。
「雫石、どうしたの?」
更衣室のドアを開けながら聞いてみた。
「どうしたの、って…先生の話聞いてた?」
「…実は全然、聞いてなかったりする」
「だと思ったー」
ぶーっと膨れる雫石に謝り、困った顔をすると、許してあげる♡なんて言ってくる。
「なんかね、今日委員会とか決めるんだって」
あ、さっき先生の言ってたやつか。
「委員会くらい普通決めるんじゃない?」
「問題はそこじゃないの!
…修学旅行のね、班も決めるんだって」
「修学旅行だって、普通決めるよね?」
「だぁかぁらぁ!そこじゃなくて!
その班がね、なんと…7人組なんだよ!」
「えー、中途半端だね」
「そうなの!あと3人、どうする?」
私と雫石、泰汰と涼我はもう数に入っている。
それが当たり前だと思えるのは、幸せなことだ。
「泰汰に言えば、大丈夫じゃない?」
あいつは顔が広いからねー!なんて言ったけど、雫石の顔はまだ晴れなかった。
「男女各3人ずつは絶対なんだって
あいつ、女子誘わなさそう」
「あー…」
つまり、私達の力で女子を最低1人は入れなければならない。
「━━━♪」
予鈴がなる。
既に着替え終わった私は雫石が制服を片付けるのを手伝ってから、急いでグラウンドに向かった。