光の花の散り際に


「……ねえ、彰人」


再び寝ようとしていた彰人を引き止めて、ベッドに膝をつく。
そして浴衣が乱れないように注意しながら、力一杯彰人のことを抱き締めた。


「あたし、彰人のことが大好きだよ」


この気持ちは、最初から最後まで変わらない。
すべてを捧げると誓ったことに、嘘偽りなんかないよ。

だからこそ、どんなにあなたがあたしを求めてくれなくても、ここまであなたと一緒にいたのだから。

あなたが好きだからこそ始まった関係に、後悔なんかしない。
あたしを求めてくれないことを責めたりもしない。

ただ、あたしが今、彰人に思うことは一つだけ。


「……大好きだから、彰人にはもっと幸せになってほしい」


彰人が幸せになるとき、出来ればその隣にいるのはあたしでありたい。
そしてずっとずっと、彰人に寄り添っていきたいと思う。

でも、あたしではその役目が務まらない。
それは彰人が今の彼女と付き合い始めたときに、痛いほど感じ取ってしまった。


「彼女のこと、心から好きなんでしょう? だったらさ、大事にしなくちゃ駄目だよ。絶対に、悲しませたりしちゃいけない」


名残惜しい気持ちを振り切って身体を離す。

すぐそばで視線を合わせると、彰人の瞳が動揺で揺れていた。
いつもは自信たっぷりの瞳が特徴の彰人にすれば、かなり珍しい状態だった。

……でも、それが彰人の本音だ。

彰人のことは分かっているつもりでも分かっていないことが多いあたしだけど、本当にこれだけは確信を持って分かっている。

彰人が彼女に、あたしが求めていた心を捧げているってこと。
あたしとは違い、ちゃんと愛情を捧げている。

きっと、すべてを捨てて捧げるほどの覚悟を持って……。


「――彰人、彼女と、幸せになってね。だから……さよならしよう」


これが、あたしがあなたに出来る精一杯のこと。

大好きなあなたに、幸せな未来を捧げるよ。


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