光の花の散り際に
あたしは所詮“何人もの女”の一人で、どうせ一番というのはその中での順位。
そんなのちっとも嬉しくない。
怒りよりも悲しみの方が大きかった。
だけどあたしには、それを口に出来る資格がない。だってあたしは、大勢いる浮気相手の一人。
だから代わりにその日、彰人の腕の中で泣いた。
はらはらと溢れる涙を、彰人は何度だって掬ってくれる。
だけど、あたしの気持ちを救ってくれることは一度もなかった……。
目が覚めると、目の前に彰人の穏やかな寝顔があった。
すう、すうっと息を溢す姿は普段の凛々しい表情とは違って、とても幼く見えるから不思議。
この寝顔を見られる朝に幸せを感じていたのは、一体いつまでだったかな……。
きっと彰人がまだ、あたしの心を求めてくれていたときだろう。
彰人が少しでもあたしと同じ気持ちを求めてくれていた頃なら、身体の繋がりも幸せだった。
でも、今は違う。
彰人はあたしに、気持ちなんて求めていない。
その証拠に、花火大会にあたしを優先してくれるようなことはないのだから。
今彰人が付き合っている彼女は、とても厳しい家庭で育てられたお嬢様らしい。
だから門限も9時。
おかげで花火大会も、途中で帰らなければ間に合わなかったという。
でも、だからこそ彰人はあたしに会う時間を作れた。
彼女を家まで送り届けてもまだ花火は終わっていないから、一緒に花火が見たいと言うあたしに付き合ってくれた。
優先してくれたわけでもない。むしろ余った時間を潰すための都合のいい相手だから、わがままを聞き入れてくれただけ。
悲しくならなかったわけじゃない。
でも、決意を固めるにはちょうどいいから、これでよかったと思う。
幸せな思い出と同じように、二人で花火を見る。
そんな些細な夢を見たあとに、すべてを終わらせると決めていたから――。