絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
すがすがしい夏の朝の空気を吸いながら、気が付けば足は自然とあの「プティの風の丘」に向かっていた。

シルフィが気に入って、いつもファイツを連れて行くあの場所だ。

さわさわと風に揺れる芝の丘の上、一本の月桂樹のそばに、テフィオは一人腰掛けた。

渡る風は緑の匂いを運び、昇り来る朝日が芝を金色に輝かせる。

確かに美しい場所だとテフィオは思った。

きらいじゃない、と。

美しい景色は人を癒し、人から必要とされる。だから、きらいじゃないのだと。

だが…。

テフィオはふと、足元に転がっていた石ころに目を留めた。

この石ころは…?

誰からも望まれないもの。美しくもないもの。

それはまるで今の自分だとテフィオは思った。

自分には何もない。

誰からも望まれていない。

“気”が…弱まってしまったせいで。

「いやだ、石ころでなんて、いたくない…」

テフィオは石を蹴り飛ばした。

石ころはころころと転がり、芝の陰に消えた。

「必ずラダメシスを手に入れるんだ。そして運命の英雄に、なってみせる…」

『―――運命の英雄はもう選ばれておる』

急に頭に声が響き、テフィオははっとあたりをみまわした。

すっかり馴染んだこの脳裏に声が響く感覚は…。
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