絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
高い天井からさがるシャンデリア。

大きなシルク張りのソファに、磨き抜かれた最高級ヒノキのテーブル。

食器棚の中には色とりどりの宝石の埋め込まれたワイングラスや、青硝子の皿が並ぶ。

中庭には噴水まである。

これがテフィオの宿舎かと、集まったシルフィ、ファイツ、プチ、シャドウは感嘆の声を禁じ得なかった。

「今、黒板を持ってくるから、好きなところに掛けてくれ」

テフィオが奥にさがると、シルフィの腕の中にいたファイツが暴れ、羊皮紙に殴り書きした。

『僕は勉強なんかしない』

「お願いだよファイツ。勉強してくれないと、ファイツが退学にされたり、私たちが謹慎になったりしてしまうの。退学になったりしたら…即奴隷にされてしまうよ。それだけは防がなきゃ」

『そんなこと言って、本当は僕より自分のことが心配なんだろ』

「それは違うよ!」

『違わない。お前たちなんか、やめてしまえばいいんだ』

「ファイツ…」

シルフィの悲しげな表情に気づき、ファイツははっとする。

しかし、テフィオだけでなく、このシルフィにも自分に優しくする目的があるに決まっているのだ。人間なんてそんなものだ。騙されてはいけない。

けれどその表情を見たことで、席にくらいは座ってやってもいいかとファイツは思った。

こんな上等な椅子は、滅多に座れるものでもないし…。
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