絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
ファイツが腰掛けると、テフィオが移動式の黒板を部屋の奥から持って来た。

そして予想される出題範囲と学習時間をてきぱきと告げる。

「徹夜になるが、がんばってくれファイツ」

ファイツにはまったくやる気がなかったが、テフィオの講義は流れるように始まった。

時折テフィオが問題をつくり、ファイツに解答するよう求めてくる。

ファイツが無視していると、シルフィたちが明るく声をかけてくる。

「ファイツ、本当は数学得意でしょう? いつもできてるもんね」

『ファイツ君、ボクもやるよ、一緒にやろうよ』

プチにまでそう言われると、つい、ファイツも意地を張れなくなり、問題に取り組んでしまう。

知的活動などなんとしてもしないと決めたのに。

『答えは…3?』

羊皮紙にそうつづると、シルフィが満面の笑顔を見せた。

「すごいね! あたってるよ!」

「やればできるじゃないかファイツ」

テフィオまで笑顔を見せたことに、ファイツは無性に腹が立った。

そんな偽物の笑顔に、騙されてなるものかと思った。

同時につきんと胸が痛んだ。

なぜかはわからないけれど…。
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