絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
「伝説はただの伝説にすぎんよ。
安心なさい。この国のことは、私がなんとかする。
言いたいことはわかったから、君はもう帰るといい。衛兵、城下まで彼女を送ってさしあげよ」

「よいのですか!? 不法侵入の罪は―」

「よいよい。小娘一人にできることなどありはせぬよ」

話が終息に向かっていることに気づきシルフィは焦ったが、どうしようもなかった。

「二度と、こんな真似はせぬようにな」

その一言で、直接王に訴えるというシルフィの一世一代の挑戦は終わった。

―やはり、取り合ってはもらえなかったか…。

皇宮からつまみだされたシルフィは、プチとシャドウと合流し、最近のテフィオについて思いを馳せながら街を歩いた。

最近のテフィオは今までと違う。とにかくおかしいのだ。

最初から淡々としたところのある人だったが、すべての人を拒絶するような凍てつく視線を持った人ではなかった。

それが今は存在そのものがまるで鋭利な刃物のごとく鋭い。不用意に近づけば斬りつけられる、そんな雰囲気の人になってしまった。

シルフィとはまったく口をきいてくれないし、睨みつけるようにしていつもファイツを見ている。

いったい、何があったのだろうか…。

そんなことを考えていると、すれちがった人の会話が耳に届いた。

「俺、実は今日も街が伝説の炎で焼かれる“滅亡の日”の夢をみたんだ」

「ええ!? あなたも!? 私もなのよ。もう一週間連続で。私、なんだか怖いわ」

こういった会話が聞こえてくるようになったのは、一週間ほど前からだ。

シルフィは胸にじりじりとした焦りを感じた。

人々が皆、滅亡の夢を見始めている。

それは決して偶然ではないだろう。

七日間太陽が隠れるという“暗陽節”の日が、近いのだ。

それはシルフィに残された時間が少ないことを意味していた。
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