絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
『国王様に訴えてもだめか…
どうするシルフィ、今日もやる?』

肩の上のプチの問いかけに、シルフィは大きく頷いた。

「やるよ! 街頭演説! あたしにできることをしなくちゃ。みんなを…守らなくちゃ」

広場の無料相談所に「滅亡の日を防ごう!」「絆を取り戻そう!」と看板を掲げ、シルフィは大声を張り上げた。

「今皆様が滅亡の日の夢を見始めたのは、決して偶然ではありません!
私たち人間が妖精に対する態度を改めない限り、近々私たちは滅びの日を迎えることとなります!
妖精を奴隷から解放しましょう!
皆で訴えればまだ間に合うはずです!」

しかし、誰一人として立ち止まる人間はいない。

皆滅亡など望んではいないが、便利な生活の礎となっている妖精を解放することも望んでいないのだろう。

「お姉さん! 今日も僕、手伝うよ」

現れたのはあのリコリウス。最近彼は街頭演説を手伝ってくれるようになっていた。

シルフィとリコリウスの間には、確かに小さな絆が芽生え始めている。

けれどこの小さな絆だけでは、妖精王たちは納得してはくれないだろうこともわかっている。

どうすればよいのだろう。

どうすれば絆を取り戻し、滅亡を防げるだろう。

その答えもわからぬまま、シルフィはがむしゃらに声を張り上げるのだった。
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