絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
一方テフィオは、皇子宮の自室にて天蓋付きの豪奢な寝台に腰かけ、ぼうっとしていた。

寝台の上にはふわふわの枕以外にも色とりどりのクッションがいくつも置かれ、好きなものを肘掛けにできるようになっている。

テフィオはそのどれも使う気になれずに、ただうつむいて、やわらかな寝台に浅く腰掛けるだけだ。

先程謁見の間で関係を否定した時の、シルフィの傷ついた表情が目の裏に蘇る。

胸がつきんと痛んだ気がしたが、テフィオは自分で自分のその感情を否定した。

シルフィは邪魔なのだ。

優しさや絆を思い起こさせるシルフィ。

彼女からは離れた方がよいのだ。

―自分のために。

テフィオは一週間ほど前の出来事を思い起こした。

リコリウスが実の父を人身売買容疑で訴えたことにより、バリバウスの辞任が決まったとの報が来たのが二週間前。

彼の辞任によりいろいろなことがやりやすくなったので、三日で近衛を下げさせた。しかし、それは重大な過ちであった。

それこそが、バリバウスの狙いだったのだから。
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