絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
腕の中のシルフィの体はあまりに華奢で柔らかく、もろい。

怯えたような瞳も、悔しげに噛みしめた唇も、すぐそばにある。息がかかるほど、すぐそばに。

テフィオの中で何か強い感情が暴れ出したが、テフィオはそれを無理やり抑えつけると、なるべく冷淡に見える微笑を浮かべた。

「―――俺が好きか」

「…!!」

彼女の気持ちになど、とっくに気が付いていた。

瞬時に耳まで赤く染める様を、見なくとも。

「俺に愛されたいか」

シルフィがテフィオを睨みつけた。

「手を、はなし――――」

しかしテフィオは最後まで言わせなかった。

強引に、それを封じたのだ。

自らの唇で。

柔らかな唇の感触を感じながら、なぜかテフィオは泣きたくなった。

シルフィが腕の中で暴れるのがわかった。けれどテフィオはそれを力で押さえつけた。

どれくらいそうしていただろう。

テフィオがやっと唇を離すと、シルフィの平手打ちが頬に炸裂した。

見れば、シルフィが泣いている。

白い頬を滑り落ちる、透明な涙。

一瞬、テフィオはその美しさに呆けた。

それで力が緩んだのだろう、シルフィはテフィオを突き飛ばすと、肩で息をしながら叫んだ。

「…さいってーだよ!! テフィオ先生!!」

そんなこと、改めて言われずともわかっていた。

自分は最低な人間だ。
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