絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
一人の青年と、妖精。

テフィオと、ファイツであった。

「アンティスト様! 妖精王様!」

皆が声を上げ、ひれ伏す。

このことに一番驚いているのは、当のテフィオとファイツであった。

だが、自分たちに何か魔法じみた力が働いていることはわかった。それがアンティストと妖精王の力以外ではありえないことも。

彼らはどこかからこの光景を見ている。

そして自分たちに力を貸してくれている。

そう思った二人は、アンティストと妖精王を、演じ切ることに決めた。

「鎮まれ! 皆の者!」

あのしゃべることすらできなかったファイツが、今、堂々と胸を張り、朗々と声を響かせている。そう、その声は魔法じみた力で、すべての人間と妖精たちの脳裏に、響き渡っていた。

「我ら妖精が求めてやまぬ新しい希望の世界は、ここにある!
こここそが、夢の楽園であるというのに、なぜ、気づかない!
たった一人の少女が示してくれたものが、お前たちには見えないのか!
絆(プティ)はここに、ここにあるではないか!」

するとシルフィと会話していた妖精軍のリーダーが、困惑したような声をあげた。

「恐れながら王よ。確かにその少女は信頼に値する。しかし、人間は信用できない。現に、その少女を射抜いたではないですか」

ふっと、妖精王を演じるファイツが微笑みを浮かべた。

「その少女だけではないよ。見よ」
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