絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
「…それから、他クラスの妖精との接触を特例として許してほしい。これが俺の願いだ」

バリバウスは渋面のまま短く「…承知した」と答えた。救命の請願を受け入れたのだ。

『えぇぇ~!? ちょっと待って、どういうことシルフィ! 協制先生(パートナーラキスター)ってつまり!?』

「つまり…っ」

シルフィはふるふると震える両手を思い切り空へと突き出した。

「先生になれるってこと! やったぁ!! チャンス到来!! ばんざ~い!!」

シルフィが言っていたチャンスの匂いというものも、あながち間違いではなかった。

テフィオが救命の請願をできたのは盗賊たちが襲って来たからであり、盗賊たちが襲って来たのは門番が風邪をひき弱そうに見えたから。門番が風邪をひいたのは雨が続いていたからなのだ。

今すべてのチャンスの糸がつながって、シルフィはとんでもない方法で教師となることができた(予定)のである。

シルフィはその場でぴょんぴょん飛び跳ねると、不意にプチを抱き上げずいっとバリバウスの前に差し出した。

「はいっこの子モデル」

「…??」

バリバウスは不可解そうに片眉を跳ね上げる。

「さあ~やってもらいましょうか裏声で人形劇!! この子をモデルに人形をつくってもらいますよっほら早く!」

『え? ボクモデル? 照れるなあ』

バリバウスは悔しそうにふんっと鼻を鳴らすと、肩を怒らせて踵を返した。

「ああっ、ずる~い校長先生! 約束~!」

約束を守らせるだけでなく、ぜひこの場で皆の前でやってもらわねばと、バリバウスを追いかけようとしたシルフィはしかし、誰かに肩を掴まれ振り返った。そこにはテフィオの厳しい表情があった。

「おいお前、名は」

改めて間近で見ると、テフィオはかなりの美形だった。涼やかな目元に通った鼻筋、形の良い唇。微笑めばさぞ優美だろうに、厳しい表情がそれを感じさせない。むしろ刃のように鋭利な印象を与える。

「シルフィ。シルフィ・レピエンスだよ」
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