絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
千年の昔から人間と共に暮らしてきた不思議な生き物、“妖精(ファンタジェル)”。

それはレッサーパンダという動物に酷似した、赤い毛皮を持つ小さな生き物。

雄が炎を、雌が水を、自在に操る力を持っている。

妖精先生とは彼らに人間の言葉をはじめとする学問を教える職業である。シルフィは今日、その面接を受けるために急いでいるのだ。

今日この日を迎えるために血のにじむような努力の日々があった。

それを支えてくれたのがプチを始め共に森で暮らす動物たちだった。

国語、数学、理科、社会、語学、政治経済の教科書集めも手伝ってくれたうえ、宮廷マナーや用語については宮廷に忍び込んで仔細を報告してくれた。

彼らがいなければ、毎年何百人もの人間が受験し、超難関と言われる筆記試験を、20位という最下位ながらも突破することはできなかった。

「プチ、来てくれてありがとう」

『何言ってるの。シルフィはボクの命の恩人、それに大親友でしょ! いつだって応援してる。どこにだって一緒に行くよ』

言い切った直後、プチは空を飛んでいるにも関わらず盛大に人とぶつかった。

それが怖い顔のおばちゃんであったからたまらない。

「どこ見てんだいばか鳥!」と大根を振りかざして追ってくる。

さらに悪いことに、慌てたせいかもう一人ともぶつかってしまった。

しかもその人物は髪の毛が頭頂に二本しかない老人で、ぶつかった拍子にあろうことかくちばしでそのうちの一本を抜いてしまった。

かんかんに怒った老人までもが加わって、鬼ごっこの始まりだ。もうおわかりだろうが、プチはいつもこの調子、つまりドジっ子なのであった。
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