絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
シルフィの講釈が終わり教室に着くと、テフィオはどっかりと床の上に腰を下ろした。
「授業開始時刻だ。さっさとはじめろ」
「あれ? ファイツ? 何見てたの?」
おんぼろの教室にただひとつの席に座っていたファイツがじっと壁の方をみつめていたので、シルフィはその視線を追った。
するとそこには掲示板に、王室広報が貼りだされていた。
“建国より100年でいずこかへ姿を消した我らが英雄アンティストは、900年ののちに再び戻り、その時に運命の英雄を選ぶと約束したという。
運命の英雄とは、真の英雄。選ばれれば、すべての人間を従えるに値する栄誉となるであろう。
900年が経とうとしている今、誰が選ばれるか、それは決まったも同然だ。国内で最強の気剣使いであり王室の貴公子、セクスティウス皇子に間違いないであろう。
アンティスト様は、今日の繁栄を喜んでくださるに違いないというのに、妖精どもは違う意見を持っているようだ。
アンティスト様と共に妖精王までこの地に戻り、その時二人はこの繁栄に怒り狂うというのだ。
そして金色の炎で人間すべてを焼き尽くし妖精を新たな楽園へ連れていくという。まったくばかばかしい話である”
「―大丈夫だよファイツ。滅びの日なんて来ないから」
シルフィの優しい声音に返答を返したのは、ファイツではなくテフィオだった。
「フゥ、おめでたい奴だな。コイツがその記事を見ているとしたら、人間の滅亡を願っている以外ないだろう。妖精は自由に人間の言葉をしゃべれるのに、コイツが口をきかないのも、人間を憎んでいるからに違いない」
「何を言うの。きっとそんなことないよ。ねえファイツ?」
ファイツはシルフィに応えるでもなく、いつの間にか王室広報から視線を外して虚空を見つめている。
「さあ、さっさと授業を始めろ。でないとやめさせるぞ」
「わかったよ。では授業を始めます! あたしは教科を担当するシルフィ・レピエンスです。よろしくね! ファイツ! さあ、おいで!」
シルフィがおもむろにファイツを抱き上げ教室を出て行こうとするので、テフィオは目を剥いた。
「!? おい、どこへ行く!」
「今日は理科からやります。身近な自然について学びましょう。さあ行くよ、外へ!」
「なんだって。指導要綱に従って―。待て」
シルフィの背中を追いながら、早くも頭痛を感じ始めているテフィオであった。
「授業開始時刻だ。さっさとはじめろ」
「あれ? ファイツ? 何見てたの?」
おんぼろの教室にただひとつの席に座っていたファイツがじっと壁の方をみつめていたので、シルフィはその視線を追った。
するとそこには掲示板に、王室広報が貼りだされていた。
“建国より100年でいずこかへ姿を消した我らが英雄アンティストは、900年ののちに再び戻り、その時に運命の英雄を選ぶと約束したという。
運命の英雄とは、真の英雄。選ばれれば、すべての人間を従えるに値する栄誉となるであろう。
900年が経とうとしている今、誰が選ばれるか、それは決まったも同然だ。国内で最強の気剣使いであり王室の貴公子、セクスティウス皇子に間違いないであろう。
アンティスト様は、今日の繁栄を喜んでくださるに違いないというのに、妖精どもは違う意見を持っているようだ。
アンティスト様と共に妖精王までこの地に戻り、その時二人はこの繁栄に怒り狂うというのだ。
そして金色の炎で人間すべてを焼き尽くし妖精を新たな楽園へ連れていくという。まったくばかばかしい話である”
「―大丈夫だよファイツ。滅びの日なんて来ないから」
シルフィの優しい声音に返答を返したのは、ファイツではなくテフィオだった。
「フゥ、おめでたい奴だな。コイツがその記事を見ているとしたら、人間の滅亡を願っている以外ないだろう。妖精は自由に人間の言葉をしゃべれるのに、コイツが口をきかないのも、人間を憎んでいるからに違いない」
「何を言うの。きっとそんなことないよ。ねえファイツ?」
ファイツはシルフィに応えるでもなく、いつの間にか王室広報から視線を外して虚空を見つめている。
「さあ、さっさと授業を始めろ。でないとやめさせるぞ」
「わかったよ。では授業を始めます! あたしは教科を担当するシルフィ・レピエンスです。よろしくね! ファイツ! さあ、おいで!」
シルフィがおもむろにファイツを抱き上げ教室を出て行こうとするので、テフィオは目を剥いた。
「!? おい、どこへ行く!」
「今日は理科からやります。身近な自然について学びましょう。さあ行くよ、外へ!」
「なんだって。指導要綱に従って―。待て」
シルフィの背中を追いながら、早くも頭痛を感じ始めているテフィオであった。