絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
鬼ごっこをしているうち道は広場の中心にさしかかった。
三階建ての柱廊で囲まれた広大な円形広場である。
ここから皇宮や神殿へと放射状に道が続く。ここは大陸一の帝国の中心であるから、まだ昼前とはいえ人混みが半端ではなかった。おかげで追跡者をまくことはできたが、シルフィたちはすぐに思うように前進できなくなってしまった。
「どこ見て歩いてる!」
「おい、足を踏んだぞ!」
「ごめんなさ~い!」
あまりの人の多さに、ついにシルフィは立ち止まってしまった。それどころか、人の流れに押されて行きたい方向とは逆に行かされてしまう。
『わわ、どうするシルフィ! これじゃ面接に間に合わな…』
プチが不安そうに声を送ったとき、ざわめきを掻き消す咆哮があたりに響き渡った。
同時に、巨大な影が柱廊の上からひらりと舞い降りる。
それは漆黒の美しい雌狼だった。
「きゃ~! 狼よ!」
「狼だ! 逃げろ!」
人々が逃げ散る中、プチとシルフィは目を円くする。
「シャドウ!?」
シャドウと呼ばれたこの雌狼は、迷いの森の主だ。
常人は迷ってしまい一度入れば抜け出せないといわれる迷いの森の隅々までを知り尽くしている。プチ同様共に暮らす仲間で、両親のないシルフィにとっては母親のような存在である。
シャドウは振り返ると、再び咆哮をあげながら声を送ってきた。
『わらわが道を創る。ついてまいれ』
口数が少ないため滅多に聞けない声は、低くドスがきいている。このシャドウもプチと同様に数年前“声”を得た動物であった。
『シャドウ、どうして、だって、あんなに―』
「とりあえず今は行こうプチ!」
咆哮しながら人並みを割いて疾駆をはじめたシャドウを追いかけ、シルフィが再び走り始めた。
三階建ての柱廊で囲まれた広大な円形広場である。
ここから皇宮や神殿へと放射状に道が続く。ここは大陸一の帝国の中心であるから、まだ昼前とはいえ人混みが半端ではなかった。おかげで追跡者をまくことはできたが、シルフィたちはすぐに思うように前進できなくなってしまった。
「どこ見て歩いてる!」
「おい、足を踏んだぞ!」
「ごめんなさ~い!」
あまりの人の多さに、ついにシルフィは立ち止まってしまった。それどころか、人の流れに押されて行きたい方向とは逆に行かされてしまう。
『わわ、どうするシルフィ! これじゃ面接に間に合わな…』
プチが不安そうに声を送ったとき、ざわめきを掻き消す咆哮があたりに響き渡った。
同時に、巨大な影が柱廊の上からひらりと舞い降りる。
それは漆黒の美しい雌狼だった。
「きゃ~! 狼よ!」
「狼だ! 逃げろ!」
人々が逃げ散る中、プチとシルフィは目を円くする。
「シャドウ!?」
シャドウと呼ばれたこの雌狼は、迷いの森の主だ。
常人は迷ってしまい一度入れば抜け出せないといわれる迷いの森の隅々までを知り尽くしている。プチ同様共に暮らす仲間で、両親のないシルフィにとっては母親のような存在である。
シャドウは振り返ると、再び咆哮をあげながら声を送ってきた。
『わらわが道を創る。ついてまいれ』
口数が少ないため滅多に聞けない声は、低くドスがきいている。このシャドウもプチと同様に数年前“声”を得た動物であった。
『シャドウ、どうして、だって、あんなに―』
「とりあえず今は行こうプチ!」
咆哮しながら人並みを割いて疾駆をはじめたシャドウを追いかけ、シルフィが再び走り始めた。