絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
『女の教師はいない』

駆けながら、珍しいことにシャドウがシルフィに語りかける声が聞こえた。

「うん」

『この社会の中でも特に規則に厳しいところだ』

「うん」

『規則を守れぬものは当然落とされる。それでも、その格好で行くのか?』

シャドウの台詞はもっともであった。

この国の人々は、男であれば白の半そで衣(エトゥ)の下にゆったりとした男衣(ヴィエト―ズボンのこと)をはき、黄金色の腰布(ファレム)と首布(ライナ―スカーフのこと)を巻く。

女であれば踝まで届く長い女衣(フィエト―ワンピース)に、同じく黄金色の首布と長い腰布を巻く。腰布の端は手首に巻きつけるのがふつうだ。

それに比べてシルフィのいでたちは、あまりにも奇抜と言ってよかった。

まず、上から下まですべての衣の色が鮮烈な赤だ。

それはこの黄金の街であまりにも異質だった。

さらに、女衣(フィエト)の丈は腿までと短く、健康的な素足を惜しげもなくさらしている。これも女性の身だしなみとして言語道断とされる。そのうえ、腰布は手首に巻かずにそのままなびかせているのだ。
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