絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
昼前の一番賑わう時間を迎えた広場(フォロ)は人でごった返していた。

日差しを浴びて見事な黄金色に輝く、荘厳な街並み。

そこをせわしく行き来する、黄金の衣服に身を包んだ人々。

彼らを自在に運ぶ、きらめく水路と舟。

ファイツは初めて見る街のすべてに興味津々、視線が釘付けになっているようだった。

森から学校へと連れてこられる時には、妖精たちは箱詰めされてまったく外を見る機会がないというから、無理もないだろう。

「ここはまさに世界の中心、天国だと考える人もいるくらいだよ。知ってる? ここジュピテリオスに至る道を、多くの人々が“天国への道”と呼んでいること。
天国への道は三つあって、北のラズリア海を通る“海上の道”、北東の草原地帯を通る“草原の道”、砂漠を通る“オアシスの道”…それらを通って、宝石や香辛料や絹や珍しい動物、ありとあらゆるものがここジュピテリオスに集められるんだ」

語るシルフィの声はどこか陰をはらんでいる。

それもそのはず、この繁栄の陰に、妖精奴隷たちの存在があるのだから。

天国などと、誤解もはなはだしいとシルフィは思っていた。
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