絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
「明日は休日だから、夜、アジトに忍び込もう」

どうしてこんなことをする羽目になっているのか意味不明だが、なんだか成り行きでテフィオとファイツも同行することになっている。

まあファイツに「頭を使わせる」ことが大事だから、よいと言えばよいのだが…。

「明日は特別な日になるよ! ふふ…プチ、シャドウ、くれぐれもよろしくね!」

「おい、まさかこいつらも連れて行くのか」

「ううん! なるべく目立たないように、待っててもらうつもり。特別な日っていうのは、潜入とは関係ない、でも特別な日」

「? なんなんだそれは」

「それはまだひ・み・つ! 知りたい?」

「…別に知りたくもない」

「そう? 眉間の皺の数が一本ななめに増えてるよ? 今まで観察してきたところによると、こういうふうにしわができるときは、気になることがある証拠だよ?」

「! うるさいな。人のことをいちいち観察するな」

―気になるのはお前なんだよ、病原菌!

その日の午後。

いつもの実技授業は、だんだんと“実技授業”らしくなってきていた。

テフィオが指導してよりひと月あまり、ファイツが炎らしい炎を、やっと吐けるようになってきたからだ。

テフィオが、ファイツの炎を吐き続けられる長さや威力を、羊皮紙に丁寧に記録してゆく。シルフィは応援兼監督役だ。

「ファイツ、もう一度だ!」

「……っ!」

「がんばれ~!」

休日に三人で活動しているせいか、息もぴったりである。

炎を吐き続けてへろへろになったファイツに水を差しだしながら、シルフィが声をかける。

「ファイツ、明日作戦前にまた街へ行かない? どうしても見せたいものがあるの」

シルフィが差し出す羊皮紙に、ファイツはしばし逡巡してから返事をつづった。

『どうせいやだといっても連れて行くんだろ。好きにしろ』

「ファイツ! ありがとう!」

シルフィにぎゅっと抱きしめられ、ファイツはじたばたと暴れた。

なぜ抱きしめてくるのか。

なぜ礼など言われるのか。

まったくわからないことばかりだ、と内心でつぶやきながら。
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