絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
翌日の昼過ぎ。

ファイツは街帰り、シルフィのかばんの中で解せない思いを感じていた。

どうしても見せたいものがあるなどと言って連れ出したくせに、シルフィの奴、いつもと変わらず相談所に連れて行っただけだった。ファイツの記憶にある限り、真新しい“シルフィが見せたがるようなもの”などなかったように思う。

ひとついつもと違った点といえば、プチとシャドウが同行しなかったということだろうか。

ファイツの脳裏にプチの愛らしい姿が蘇る。

シルフィやテフィオなど大嫌いだが、プチ…のことはどうしても嫌いになれない。

森にいた頃、秘密の広場に身を潜めるしかなかったファイツにとって、そこに住む鳥たちは大好きな友達だったからだ。

ついカワイイ、と思ってしまう。

そう思うのはどうやら自分だけではないようだ。

毎回毎回どうやって、寮の見張りの目をかいくぐっているのか疑問に思っていたが、それにはプチが一役買っているらしいと最近知った。

なんと、プチがその愛らしい容姿と好ましい気質で見張りたちを魅了し、その隙にシルフィたちが寮に入り込んでいるのだという。

具体的には、かわいいしゃべる鳥として現れ、見張りたちと数十分のお茶会を開いているのだとか。

ばかげた話だ。

シルフィたちときたら何もかもばかげているから、今に始まったことではないが。

今日も、どこからか現れたプチが見張りたちと談笑している隙に、シルフィがそっと鞄を開けてファイツを地面におろした。
< 82 / 176 >

この作品をシェア

pagetop