絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
テフィオは素早く木剣を構えながら、舌打ちする。

いくら卓越した剣の技術を持つ彼でも、一斉に来られては数が多すぎるのだ。

それもシルフィとファイツを守りながら戦わねばならない。

「おいお前、気剣を出して戦え!」

「ううん、妖精先生はそんなことしない」

「は!?」

「戦わないよ。武力では何も解決しない」

「何をのんきなことを…―クソッ」

敵は二人のやりとりを待ってはくれなかった。

四方八方から襲い来る剣を、テフィオは間一髪でかわしながら、木剣で応戦する。

気剣に比べれば格段にもろい木剣で戦うには、敵の勢いを受け流す剣運びが大事になる。しかしシルフィ、ファイツを守りながらそれを行うのは至難の業で、テフィオはすぐに体のあちこちに裂傷をつくることになった。

テフィオの目前に刃が迫る!

その時ファイツが目の前に飛び出し、敵の顔面に炎を吐いた。

「うわあ!」

顔をおさえてうめき、敵の一人が崩れ落ちる。

よくやった、と声をあげる前に、今度はシルフィに危険が迫る。

バリバウスだ。自ら手をかけるつもりらしい。

容赦なく振り下ろされた気剣を、シルフィはなんと、素手で受け止めた。

無論、彼女の両手からは鮮血がどくどくと溢れだしている。

この光景、見覚えがあるだろう。

面接の日と同じ光景だ。

そして違うのは、バリバウスが決して手を引かないこと。

そのまま剣を押し進め、彼女の両手を切り落とし、首をかききるだろうことだ。

「クソ…! 仕方ない!」

テフィオは不意に、首からいつも密かにさげていた笛を吹き鳴らした。

ピ―――――――――ッ!!
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