絆物語~クールな教師(アイツ)と狼少女の恋~
しかし、武芸試験の直前、突然。

突然、テフィオの気の力は気剣を創り出すことができないほどに弱まってしまったのだ。

これは、ありえないことだった。

人間の気の力は生まれた時から死ぬ時まで、変わることなどない。

だからこそ、政略結婚を重ねて、貴族たちの社会ができあがっている。

テフィオは焦った。

皇子(ディウエス)となり、全ての富と権力を手にすることが、彼のたったひとつの夢であり、希望であり、すでに決定事項であったからだ。自分にとっても、周囲にとっても。

だから必死で、かわりになる武器を探した。しかし気があって当たり前のこのジュピテリオスには、気以外の金属を武器とする文化がまったくなかった。

みつけられたのは、練習用の木剣のみ。

テフィオは仕方なく、木剣で武芸試験に臨んだ。

彼の強さは木剣でもいかんなく発揮され、テフィオは無事優勝することができたのだ。

できたのだが…。

国王ヴェネトは厳しい顔つきで、なぜ木剣を使ったのか問いただした。

今すぐ気剣をつくってみせろと。

テフィオは気剣をつくれず…

結局、準優勝の17歳セクスティウスが皇子(ディウエス)となることに決まった…。

セクスティウスはヴェネトの養子として皇宮に入り、第一皇子ディウエスとして遇された。彼を兄として敬うよう、テフィオにも通達がきた。しかしそれは、到底受け入れられるものではなかった。

それからは強い嫉妬と、戻らない気の力にうつうつとする日々が続いた―…。
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