水曜日の彼女
2人で歩きながら駅に向かう途中、あの公園の前を通った。
表情を強張らせながら、朝陽は一切公園の方を見ようとしない。
どんなに前を向こう…忘れようとしても…幼少期に受けた心の傷はそう簡単に消えてはくれない。
私は…
朝陽の手に自分の手を絡ませた。
すると…ビックリしたように私に顔を向けた朝陽。
「朝陽。明日から私が朝陽の家に迎えに行こうか?」
私がそう言うと、繋いだ手にギュッと力を入れ、朝陽が切なそうな表情で口を開いた。
「…大丈夫。
玲菜が…こうして隣に居てくれるから……。
手を繋ぐって…安心するんだな…。
今まで身体を繋げることでしか、人の温かさを感じたことが無かったから。
こういう心の繋げ方もあったんだ…。」