水曜日の彼女


「玲菜…俺…………。」



玲菜を抱きしめたまま、それ以上何も言えないで居る俺の背中をポンポンと優しく叩き、



「…朝陽。図書室行こうか…。」



と俺にだけ聞こえるくらいの小さな声で玲菜が言った。


俺は頷くと、目の前で俺達を見ていた玲菜の友達の中島彩に



「ごめん。中島さん。ちょっと玲菜借りるね。」



と一言いい、教室を出て行った。


教室を出た途端、教室の中から




『今の見た~~っっ!』

『すご~い!映画のワンシーン見てるみたいだった~』

『森山くん…玲菜の事が凄く好きなんだね~』



なんて聞こえてきたが、今はそんな事、いちいち気にしている余裕もない程…俺は何か見えないものに追い詰められていた。



廊下で千葉凛人とすれ違ったが、無視して玲菜の手を引き、旧図書室へと2人で歩いて行った。



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