水曜日の彼女
その日も大学の授業を終え、アルバイト先の事務所に向かう。
事務所のドアを開けると、いつも笑顔を絶やさない瞳さんが、いつになく真剣な表情で突っ立っていた。
私の方を向いているのに、その視界には、まるで私を捉えていないかのような…焦点すら合っていないよな目をしていた。
「瞳さん…お疲れ様です。
どうかされたんですか?」
私の声を聞いて、ハッとしたのか…
「あ……あぁ…玲菜ちゃん…。ゴメンね。
ちょっとボーッとしちゃったわ…。」
そう言って僅かに微笑むが、すぐにその僅かな笑顔ですら消えてしまう…。
体調でも悪いのかな…。
と…はじめはそう思っただけだったが、1週間経っても、2週間経っても、いつもの笑顔が戻ることはなかった。