水曜日の彼女
亜紀さんは【悪性リンパ腫】と言われる血液の癌の一種に掛かっていて、身体の免疫細胞であるリンパ球が癌に変化してしまった病気だ。
昔は不治の病として恐れられていたが、今では放射線治療や化学療法などで治すことも可能になってきた。
でも…亜紀さんが病院で受診したころには、既に【ステージⅣ】と言われる最終段階まで病状が進んでいたらしい。
【ステージⅣ】とは、癌がリンパ節以外の臓器や骨髄、血液に広がっていること。
もうこの段階まで来ると、薬で抑えながらゆっくり最期の時を待つしかない……とのことだ。
「最近ずっと体調が悪そうだったから、嫌がる本人を無理矢理連れ出して病院に行ったの。
そしたら……癌の末期だと言われた。
それが丁度1ヶ月程前…。」
辛そうな表情で瞳さんが言う。
「もっと早く……私が気づいていれば……。」
そう言って瞳さんの目から、涙が頬を伝った。
「瞳さんのせいじゃありません。
私が…病院には行かなかったんですから。」